ヨシダ、裸でアフリカをゆく
ヨシダ ナギ
なんともセンセーショナルなタイトル。
しかし、中身はもっとセンセーショナルだ。
アフリカを愛し、そこに住む人々を愛し、その文化を愛し、
笑いあり、涙あり、下ネタあり、毒あり…。
人見知りで内気であったという嫁入り前のうら若き乙女が
等身大で体当たりした「アフリカ」の姿がそのままに伝わってくる一冊だ。
巻末近く、
「日本人は、噂やニュース、自分の目で確かめてもいない情報にとらわれ過ぎていると思う」
という言葉は、この本を読んだ者の心に深く感銘づけられる力を持っている。
それは、純粋な心でありのままの「アフリカ」を見つめた著者をして
計り知れない説得力を持つ。
またこの本は、一人の女性の成長の記録といっても過言ではないと思う。
英語がまるでしゃべれない状態での初渡航を皮切りに、
諸国を巡るうちに様々な社会や人々と出会い、
心の豊かさとは何か、
差別とは何か、
かなりコミカルな文体からはそうした著者自身の心の成長も読み取れる。
数多く掲載されている写真も必見だ。
現在は写真家として活動している著者。
最近はテレビなどでもその活動が取り上げられていますね。
私も著者のブログをかなり初期のころから見ているので、
(たしかここでも紹介したような気がするんだが…記憶にない)
実際この本に収録されている話は基本的にどれも知ってはいたのですが、
それでも十二分に楽しめました!
偉大なる失敗
マリオ・ リヴィオ(著)
千葉 敏生(訳)
ダーウィン、アインシュタイン…。
誰しも一度はその名を耳にしたことのある歴史に名を刻む科学者たち。
だが彼らでさえも避けることのできなかった「失敗」。
この本はそんな彼らの「失敗」を単に糾弾しているのではない。
二章を一組に、前章ではその科学者の理論や業績を紹介し、
後章では究極を突き詰めたが故に陥った落とし穴、
その失敗の理由を心理的な側面にまで踏み込んで描き出している。
なにより目を引くのが、
一見系統が違うように見える理論や失敗が相互に影響を与えていたり、
また後代の科学の発展に寄与していたり、
そうした背景をも捉えている視点の大きさだろう。
著者は言う「そういう科学者を私は尊敬してやまない」と。
本書は「偉大なる失敗」を通して科学者たちの比類なき英知を描き出そうとしている。
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
永田カビ
読後の感想としてすぐに頭に浮かんだのは
「永田カビは孤独である」
ということだった。
なぜここまでこじらせてしまったのか。
本書の大半がそこでもがき苦しみ、
気が付いた時には這い上がれないほどの深みにまではまってしまった
自身の「孤独感」への体験に紙面がさかれている。
そして「レズ風俗」という一見するとかなりきわどいイロモノを通してではあるが、
その「孤独感」との関わりを徐々にではあるが
自らの力で解決していこうとする姿勢に心が打たれた。
赤裸々な内容である。
感動はない。救いもない。
だが、現代社会に生きる私たちの誰しもが心のどこかに抱える「孤独感」、
それとどう闘えばいいのか、
この本にはその術を示唆する何かがある。
今でも永田氏は「孤独感」と格闘している模様。
pixiv上では『一人交換日記』を連載している。
これは経費で落ちません
青木 祐子
聡いというのも大変だな…。
主人公・森若沙名子は経理部の女子社員。年齢27歳。彼氏いない歴=年齢。
彼女の大切にしていること、それは「イーブン」であること。
「フェア」ではない。「イーブン」なのだ。
だから彼女の気づく他人の側面は「負」である。
要はズルい面である。
実社会にあってもかなりギスギスしそうなエピソードが並ぶ。
だが、主人公一流の性格を通し、かなり毒の抜かれた感じを受ける。
「他人事だから苦笑して見ていられる」
そんなイメージだろうか。
しかし最後まで読み進めていくうちに、
登場人物一人一人になんとも愛らしさを感じてしまうようになる。
そんな不思議な作品だった。