熊と踊れ
アンデシュ・ルースルンド, ステファン・トゥンベリ
「これはな……熊のダンスだ、レオ。
いちばんでかい熊を狙って、そいつの鼻面を殴ってやれば、ほかの連中は逃げ出す。
ステップを踏んで、殴る。ステップを踏んで、殴る!」
“暴力”
それしか教えられてこなかった兄弟。
その長男レオが計画する、誰も成し遂げたことのないあり得ない強盗事件。
第一部冒頭に掲げられた『これは事実に基づいた物語である。』という驚愕の一文は、
読む者の心を確信へと近づける。
この本は、今や北欧のミステリー界を牽引するルースルンドと、
人気脚本家であるトゥンベリがタッグを組み、
世界のミステリーファンへと叩き付けられた大いなる挑戦状である。
重ねに重ねられてシーンやカット。
まるで映画を観るような感覚でぐんぐんと物語に引き込まれていく。
前評判もかなりのものだったが、
実際に読んでみると、数年来最高のミステリーといっても過言ではないと思える。
そういえば、いつも目の前のことだけやってきた
平田静子
“平田静子”という名を知っているだろうか?
業界の中では知る人ぞ知る有名人だ。
では、彼女が手掛けた仕事を紹介してはどうか?
プロデュースしたものとして
『アメリカインディアンの教え』
『ビストロスマップ』
そして
『チーズはどこに消えた?』
そう、数々のベストセラーの生みの親である。
だが、本人はこのような未来を元々予想もしていなかったらしい。
「25歳になったらお嫁さんになってOLを辞めるつもりだった」とのこと。
それがなにがどうしたことか、編集長はおろかフジサンケイグループ初の女性取締役にまでなってしまった。
その間に結婚や子育てまでこなしてしまっている!
そんな方の自伝的エッセイ。
後半にある福田和子とのやりとりには、
平田さんの人柄と人望が切実と伝わってくる。
ただのエッセイではない。
ビジネスの根源にあるものを読む者に問うてくる。
じょうずなワニのつかまえ方
ダイヤグラムグループ
「いまは無用の知識でもいつか必ず役に立つ!」
というコンセプトのもと、
1986年、モリサワをはじめとする数々の書体や級数を駆使し、組まれた本。
そんな名著が21世紀版として蘇っている。
“文字の見本帳”
そう言っても決して過言ではない。
私個人、「無駄と思えるものにこそ最大の価値がある」と常々感じている。
一時期流行ったトリビアとか薀蓄、
そんなものではない。
有用な無駄である。
万事に備える姿勢。
この本は本当に大切な何かを教えてくれているのかもしれない。
二世
尾崎裕哉
昨今、ネット上では
「尾崎豊の歌に共感できない」
そんな10代の声が響いてきた。
時代が変わった、というそんな言葉ではとても語れない
大きな変化が彼の死後訪れたことは確かだろう。
だが、尾崎豊という一人のミュージシャンが描き出した時代は、
確かにあった。
では、彼が探し続けた生きる意味とはなにか?
尾崎豊の息子・裕哉さん。
きっとそれは彼の中にあるのだろう。
父の死後の出来事や様々に憶測された事、
それらをすべて冷静に受け止め、
また敬意をもって接している姿に心が打たれた。